自動車の整備士・獅子舞の舞方 大洞 晋一

自動車の整備士・獅子舞の舞方 大洞 晋一

大洞晋一

OBORA SHINICHI 自動車の整備士・獅子舞の舞方(宇天王の中の人)
Interview

大島山の獅子舞の関係者インタビュー第2弾です(このインタビューは祭典の後日にリモートで実施いたしました)。この集落にこの伝統芸能あり、という大島山の獅子舞において花形である「宇天王」の舞方として長年活躍されている大洞さんへお話をうかがってまいりました。祭事の表も裏もご存知な大洞さんの貴重なインタビューの模様をどうぞお楽しみください!

TAKAMORIJIN File No.034

大洞晋一

OBORA SHINICHI

自動車の整備士・獅子舞の舞方(宇天王の中の人)

機械いじり

牛乳

居酒屋「ちぃちゃん」の唐揚げ

自動車の整備士・獅子舞の舞方 大洞 晋一

今回は大島山の獅子舞がメインの記事ですが、実際に舞方として関わっていらっしゃる大洞さんにも獅子舞についてお話を伺っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。まずは今年の獅子舞を無事に終えたご感想をお伺いできますか。

この獅子舞で私は「宇天王」の舞方として参加させていただいております。かなり伝統と歴史のある祭事ですので、それに関わらせていただくのはありがたいな、という思いで今回も演じさせてもらいました。

青山さんにも伺いましたが、この地域では消防団を経て壮年団に入る流れがあって、そのうちに地域の祭りに関わるようになってくるそうですが、大洞さんの場合はどのような経緯でお祭りに関わるようになったのでしょうか。

青山さんと同じですね。

子ども時代から関わっていましたか。

小さな頃はお祭りを観に行くくらいでしたので、そこまで関わりはありませんでした。まさか自分が演じる側になるとは、子どもの時には夢にも思いませんでしたね。

演じている側から見て、今年の獅子舞の雰囲気はどうでしたか。

何より桜が残っていたのが良かったですよね。獅子舞と桜が同時に見られるというのはタイミング的にもなかなか無いことなので、今年は特にやりがいがありましたし、良いタイミングだったなと思いました。お客さんたちも、その桜と獅子舞の組み合わせを楽しみに来られているのかなと感じていましたね。

私も見ていて、大変「映える」お祭りだと楽しませていただきました。大洞さんは当初から「宇天王」を舞うことを目指していたのでしょうか。

私のお師匠さんに当たる方がいるのですが、獅子舞に関わり始めてから、その方に「宇天王をやってみないか」と声をかけていただいたのが舞方になったきっかけです。私はお囃子の曲はわかるのですが、笛を吹いたり、太鼓を叩いたりというのはできないんですよ。

なるほど。舞に関しては資料などから年数をかけて覚えるものと聞いておりますが、大洞さんはどう覚えていきましたか。

始めた当初は、舞も全然わからなかったんですよ。練習を進めていく中でお師匠さんからアドバイスをもらって、それをメモしながら、少しずつ形にしていった感じですね。

あの舞は独特なゆったりとした動きですよね。調べると、京都の方の舞楽がベースになっているようですね。

私も詳細はわからないのですが、日吉神社の舞楽(日吉神社にも舞を奉納する伝統芸能があります)とか、そういったものが原型にあると聞いています。私自身も、舞の中では指先の動きですとか細かい部分に気を配って演じております。

他に演じる際に気を配っていることや「こういったところをみてほしい」と思うところがあれば伺いたいです。

大島山の獅子舞はこの地域の「屋台獅子の源流」に当たりますので、しっかりとしたものを見せたいと思いますし、お師匠さんから伝えられている舞を丁寧にやっていきたいと思っています。宇天王もそうですが、大島山の獅子は「ライオン」というか、本当の獅子をベースにしているので、ただ激しく動くというのではなくて、そういったネコ科の動物を模した綺麗な動きになっていると思います。あとは、獅子舞にもしっかりとしたストーリーがありますので、演じる側も動きの強弱を付けたり、と考えながら演じています。

ありがとうございます。あの獅子舞は一連の演目がストーリーとなっているそうですね。その辺のストーリーはお師匠さんから聞いていたりしますか。

細かい部分は聞いていませんが、宇天王が眠っている獅子の前を通り掛かって、振り返って見つけて、それを起こして、道中を引っ張っていく、と。そのうちに獅子が眠くなって眠ってしまうので、それをさらに起こす、というのが基本的な流れと聞いております。ですので、そのタイミングに合った動き、激しく動くところは激しく、というのは考えながら演じていますね。

見ていて思ったのですが、この獅子舞は獅子が暴れん坊で宇天王がなだめているのか、それとも宇天王が眠っている獅子を起こしてからかっているのか、どちらなんでしょうね。

舞の所作としては、手の動きで獅子を抑えつけるという意味合いがありますので、獅子をからかって、というよりは獅子を抑えているというニュアンスに近いと思いますね。断言はできないんですけど。

下調べをしたのですが、宇天王というのは仏教の文殊菩薩の従者で、文殊菩薩のそばで獅子を手懐けて引いている人物のようですね。他にも猿とか面白いモチーフが沢山出てくる祭事ですよね。

青山さんからもうかがったのですが、獅子舞に参加するには地域の方が手を挙げて参加するやり方になっていると伺いました。なかなか新しい方とか、若い方を取り入れていくのが苦労していると聞きましたが、その辺はどうでしょうか。

昨夜の宵祭で宇天王として舞ってくれた方が後継者ということになっていまして、他にももう1名、若い方が参加してくれています。どちらも30代の方ですね。「陵王の舞(宇天王の舞の前に場を清めるために行う舞)」もご覧いただいたかと思うのですが、その方も将来的には宇天王として関わってくれる予定になっていますので、宇天王の役どころに関しては後継者がちゃんと出てきていますね。

その方々は同じ地域の関わりで参加されたのでしょうか。

そうですね、みんな地域の後輩という感じです。

では、地域の中から次の世代が出てきているんですね。

そうですね。私達の世代の前に一度、途切れてしまいそうになったという話は聞いておりますので。

確か昭和49年(1974年)に大島山獅子舞保存会が立ち上がったんですよね。大洞さんは保存会との関わりはありますか。

私は保存会自体にあまり参加したことはないんですけど、ここ10年ぐらいは宇天王の役は私一人でやっていますので、私自身、保存会の一部に入ってきていると言いますか、そういった感じですね。

10年近く宇天王として舞っていらっしゃるとお師匠さんから「よくなってきたよ」とか言われることはあるのでしょうか。

お師匠さんからは、見栄えの悪い部分で細かい指摘をされることもあるんですけどね。「手が開いちゃっているよ」とか。ですが、お師匠さん曰く「その人の考える宇天王」をやればいいと言われておりますので、大きく変えなければいいのかなと思っていますね。過去の歴代の宇天王の舞方たちは身長が高くて見栄えがあったんですが、私は背が低いものですから、見劣りしないように大きな動きでやっていきたいなと思っていますね。

今はもう大洞さんの思う宇天王がやれているということなのかもしれませんね。

やはり、完璧だというものはありませんからね。今回も舞っている中で草履の鼻緒を巻き込んでしまって、履き替えたりしていますから、なかなか完璧にやりきるのは難しいですよね。

あと、色々な方のお話を聞くと、お祭りの後や練習の後の集まりや飲み会が楽しみという声もあったのですが、大洞さんはいかがですか。

私が舞方として始めた際に「900年祭」というのがあったのですが、そこでデビューしたような形だったんですね。その練習の後に飲み会があったんですが、そこで突然、笛が鳴り始めて太鼓が鳴り始めて、「お前、舞をやれ」というのが突然始まるわけです(笑)
今はいい思い出ですし、それで身に付いたのでよかったんですけど、練習の後の飲み会でさらに舞をやるという感じでしたね。大変だったんですけど、地元の先輩方からお話を聞きつつ、楽しく覚えられたというのは非常に良い経験でしたね。

すごくいいエピソードを聞かせていただいたと思います。

当時は大変でしたけどね(笑)

そうですか(笑)。若手の方も出てきたと伺いましたが、今後大島山の獅子舞がどうなっていってほしいか、展望などあれば聞かせていただけますか。

大島山の獅子舞は、練習の部分から地域の皆さんが一つになっていることもあり、普段会う機会がない方でも、獅子舞となればみんなで集まって仲良くやっておりますので、地域住民にとっても重要な場ですよね。そういう目的が元々あったのかもしれないんですけどね。大島山の獅子舞はあくまで寺に奉納するお祭りではありますが、これを途切れること無く、地域の皆さんで継続してやっていけたらと思っております。

ありがとうございます。地域内外に向けて、お伝えしたいことやメッセージなどありましたら、お伝えいただけますでしょうか。

屋台獅子を見たことがない方には、あのサイズ感や動きが面白いと思いますので、興味のある方は見に来ていただきたいと思いますし、900年祭の時には境内で人が動けないくらいの盛況でしたので、あれくらいの規模でまたやることができたらと思いますね。

900年祭はどういったところが特別なんでしょうか。

何年かに1回やる特別な「獅子乗り」という演目があるのですが、通常ですと獅子を引っ張って起こすのですが、獅子頭の上に座って、一回転してから起こすというのを披露します。通常の獅子舞には無い特別な動きなので、機会があれば見ていただきたいですね。

ありがとうございます。獅子舞の舞方として宇天王は特別な存在ですよね。最初、獅子舞に関わられて、舞方も獅子頭など、色々なポジションがあるかと思うのですが、お師匠さんは最初から宇天王に向いているとか、どういった経緯で決まったんでしょうか。

獅子舞に関わると何かしらの役はやるので、最初は皆、笛を吹く役から入るのですが、私も笛を吹く役から入ったんですね。ある時にお師匠さんから誘われたのがきっかけですね。その時に宇天王に向いている人材が少なかったのもあったようです。

割と早いうちから抜擢された、ということですね。そんな宇天王を10年ほど務められている大洞さんですが、獅子舞全体であったり、宇天王の継承であったり、自分がどう関わっていきたいかを聞かせていただけますか。

私は宇天王としてはあと数年かなと思っています。次に宇天王を継ぐ若い方を見ていると、やはり人が変わると個性が出て、それはそれで良いものなんですよね。長くやるだけが良いんじゃないなと感じています。あと数年やれば私も師匠という立場になると思うのですが、きちんと宇天王を継承していければと思っています。あとは、お祭りに参加する人員もそれほど多くないので、囃子方の方も練習していきたいと思いますし、伝承していく人間になれたらと思ってやっております。

最後に、もし地域外でもこうしたお祭り、獅子舞に参加してみたいという方がいるかもしれませんので、そうした方にメッセージをいただけますか。

舞を覚えるのは大変なんですが、やりがいもありますし、興味のある方はぜひ見に来ていただいて、よければ一緒に参加していただきたいですね。なかなか他からこの地域へ来てくれる方も少ないので、一緒にやっていけたらと思いますね。

前向きなメッセージがいくつも聞けたので良かったです。ありがとうございました!

ありがとうございました!

【後記】
伝統の大島山の獅子舞の花形ともいえる「宇天王」を10年以上務めている大洞さん。ご自身はベテランとなりましたが、次世代も順調に育っているようです。中の人から見たお話は、それまで知らなかった話が多く、興味深いエピソードばかりでした。私自身、獅子舞を拝見させていただき、その歴史と伝統が籠ったダイナミックな動きに感動しっぱなしでした。皆さんもこの貴重な祭事を見に高森までお越しください!

(了)

--
写真:Noémie
文:Hattori
--
※本記事は2024年6月●日時点の内容を掲載しております