大島山の獅子舞 実行委員長 青山 武司

大島山の獅子舞 実行委員長 青山 武司

青山武司

AOYAMA TAKESHI 大島山の獅子舞 実行委員長・会社員
Interview

大島山の獅子舞の関係者インタビュー第1弾は、「この集落にこの伝統芸能あり」の大島山の獅子舞を今年度は実行委員長として裏から支えた青山さんのご紹介です(このインタビューは祭典の後日にリモートで実施いたしました)。祭事の表も裏もご存知の青山さんにうかがった貴重なインタビューの模様をどうぞお楽しみください!

TAKAMORIJIN File No.035

青山武司

AOYAMA TAKESHI

大島山の獅子舞 実行委員長・会社員

市田柿の剪定(修行中)

片付け

居酒屋・亀じぃ

大島山の獅子舞 実行委員長 青山 武司

今回は大島山の獅子舞をメインに記事を作成いたしますので、その辺りを深掘りして伺ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。まずは今年の獅子舞を無事に終えたご感想をお伺いできますか。

今までは「舞方」として参加していましたが、今年は運営側に回って実行委員会という形で関わらせていただきました。今までは舞方として(獅子)頭をやったり、笛を吹いたり、という形でしたが、実際に運営してみると、かなり大変だったという印象です。祭りとして参加したい人が参加する、という昔ながらのやり方なので、人を集める段階から苦労がありました。どうやって連絡をしていくかという仕組みもわかっていなかったので、かなり苦労しましたね。

参加者には手を挙げてもらう形で参加いただいているわけですね。

そうですね。あとは、舞方や囃子方のお師匠さん達がいまして、そこから参加を募るという昔ながらのやり方ですね。特別に周囲に声をかけて、というやり方ではなくて、出たい人が参加するような形です。

なるほど。今年の獅子舞に関して運営側から見た雰囲気といいますか、反応はいかがでしたか。

実際に終わってみてから周りの反応を聞くと、かなり好評をいただきました。ちょうど桜の散り際といういいタイミングでしたからね。

私自身、見させていただいて、非常に「映える」イベントだったのではと思いました。

例年参加してくれている方たちに加えて、若い方も大勢ご参加いただいたので、最後の打ち上げもなかなか楽しかったですね。

こういったお祭りは若い世代にバトンタッチしていくのが難しいポイントですよね。

ベテラン勢やお師匠さん達もお歳になってきているので、若い人たちに参加してもらわないと、立ちいかなくなってしまいますからね。今年は特に若い壮年団のメンバーが参加してもらったので、よかったと思います。

青山さんは舞方から運営側に回ったと伺いましたが、この獅子舞に関わるようになったきっかけはどういったことでしたか。

私も若い頃は特に関わっていなかったんですけど、やはり壮年団に入ったことがきっかけですね。壮年団の仕事で、お祭りの日に瑠璃寺の境内にある日吉神社の旗立てというか幟(のぼり)を立てるということがあったのですが、本当に大きな柱を立てて、幟を立てるんですね。そういった役目からお祭りに関わるようになって、そのうちに先輩方から獅子舞の頭を振ってみないか、と誘われ、参加するようになりました。それこそ30歳を過ぎてからですね。

お話を聞くと壮年団が大きな役割を担っている感じがしますね。

祭りの分担となると、30歳くらいの若い人は力仕事を任されますから(笑)。その流れでだんだんと地域のお祭りに関わっていく感じですね。

年齢とともに地域のイベントを主体的にされていくんですね。

地域に消防団がありまして、それが終わると壮年団に入るようになるのですが、消防団のうちはそこまで祭りに関わらないんですね。壮年団になると、地域の行事に関わるようになって、その流れでお祭りにも関わっていくようになりますね。

以前、佐々木大地さん(佐々木大地さんの記事はこちら)にもお話を伺いまして、地元の消防団に入ってから地域の方と話すようになって、今は大島山の獅子舞の舞方として活躍されていると聞いていたのですが、なるほど、そういう流れだったのですね。

若い方は、地域の壮年団に入って、お祭りに関わることで誰が笛を吹いているとか、とりまとめているとか、段々とわかっていきますので、それを若い人が引き継いで続いていっている感じですね。

ありがとうございます。先ほどお師匠さんというお話がありましたが、各登場人物の所作やお囃子の演奏はやはり練習を重ねる必要があるかと思いますが、お師匠さんから伝授されて続いていっている感じでしょうか。

教えられて段々覚えていく感じですね。まずは練習に参加して、笛を吹いてみるところから始めて、そのうちに「○○をやってみないか」と指導される感じですね。本当に参加しながら覚えていく感じです。

どの役をやりたい、というよりは参加していく中で適した役に振り分けられていく感じでしょうか。

昔は笛を吹けないと何の役もできないと言われたそうなんですが、今は笛を吹けない人もいますし、お師匠さんが指名する、というよりはその役をやりたい雰囲気を出している人に指導していく感じでしょうか。

なるほど。今は、獅子舞の運営主体は保存会になるんですかね。

そうですね。基本的な主催は保存会で、保存会の中の実行委員が実際の準備や段取りをするんですね。ただ、メインは慰労会の準備ですね。

なるほど(笑)

はい。回覧の通知を作ったり、連絡をしたり、というのは実行委員がしている感じです。本当に昔ながらのやり方です。参道に提灯が掛けてあったと思いますが、ああいうのも自分たちで準備して、とその時に参加した人たちでなんとかやっている感じですね。
昔は参加人数も多くて、ベテランも多かったので、やり方をわかっている人たちが参加して運営もスムーズだったと思うんですが、今は参加人数も減りまして、実行委員も地域の回り番でやるものですから、それまでお祭りに関わってこなかった方もいますし、やってみると難しい部分が多かったです。引き継ぐにも、何をすればいいかという資料のようなものが必要になるかなと思いましたね。

今、主体となっている青山さんたちの世代で引き継ぐ準備を進めていく段階なんでしょうね。

次へ引き継げる形にしていかないと、後の人たちもやりづらくなっちゃいますからね。これまでは舞方をやっていればよかったんですが、いざ運営になると厳しいなと。

きっと先輩方は肌感覚でわかっていた部分があって、「見ればわかるだろう」みたいなこともあったんじゃないかなと思うんですよね。

そうですね。そういうちゃんとした手順だったり、そういうのが無かったら、新しく参加した人はわからないですよね。それは、運営してみてわかった難しさでしたね。

色々と課題の部分が出てきましたが、一方で魅力や楽しい部分はどういった点ですか。

やはり大島山の獅子舞はこの飯田下伊那地域の屋台獅子の源流ということもありますので、やるなら恥ずかしくないものをやりたい、というのはありますね。出来るだけ、伝統は残していきたいなと思いますし、実際に関われているというのはありがたいと思いますね。

地域のアイデンティティになるようなお祭りですよね。

この獅子舞をやれるのは大島山に生まれたからというのもあると思うので、地域に住む人からすると関われるのは誇りになりますね。

例えば、他県や他地域から大島山の獅子舞に関わっている方はいらっしゃるんでしょうか。

他の地域や県外の方はいないですね。今も大島山の中だけでやっていますね。元々、大島山の区民だけとなっていましたが、今年から協力いただける方は区外からでも参加できるよう規約を変えました。

では今後は地域外からの方も期待できますね。宵祭で子供たちの獅子舞をやっていたのですが、地域の子供たちも興味を持つようになったとか、反響はあったのでしょうか。

「子ども獅子」は大島山の獅子舞を子供でもやりやすいようにアレンジしているんですね。実際に子どもたちも獅子舞に関わって、これから先関わってほしいなと思っていますね。子ども獅子は育成会の管轄なのですが、育成会は先ほど話に出てきた佐々木大地くんと彼のお父さんが関わっているんですよね。佐々木さん親子が育成会やPTAに声をかけてやっている感じです。去年は瑠璃寺の住職(瑠璃寺の住職・瀧本さんの記事はこちら)が獅子舞の歴史を伝えるワークショップをやっていました。獅子舞の面を実際に身近で見せたり、触ってもらったりもしていて、そこに子どもたちが大勢参加してくれました。興味を持って参加してくれたので、それは非常によかったと思いますね。自分たちも子どもの頃からお祭りは楽しいものでしたからね。子どもたちが大人になってから引き継いでもらうには、そうやって関わってもらうのがいいのかなと思いますね。

お祭りを地域で育てていくということですよね。今後、大島山の獅子舞をどのようにしていきたいという思いはありますでしょうか。

人を育てていく覚悟のようなものが必要ですね。あとは機会があれば他所へ行って舞を披露するということもやっていければと思いますね。どうしても、地域の中だけだと小さく収まってしまうので、外へ出る機会を作ることで、若い人たちの参加を促したり、参加してもらえる人を増やしていければ、継続できるかなと思いますね。

地域外からもこういう魅力的なお祭りをもっと見てもらいたいですよね。大島山の獅子舞は立派ですし、ブランドイメージもありますけど、やはり誰かに見てもらえるのはやりがいに繋がりますからね。

昔から「大島山の獅子舞は門外不出」と言われており、伝統のある格式の高い舞なので、なかなか外に出ていくのは難しいところではありますが、地域外の人にも見てもらえる機会が増えれば良いですね。

ありがとうございます。青山さんから地域の方へのメッセージや宣伝がありましたらお願いいたします。

大島山の獅子舞は4月の第2土曜、日曜日と決まっていますので、ぜひ若い人たちに1回見ていただきたいですね。それで私もやりたいという方がいれば、ぜひお声かけいただければという感じです。

本祭もいいですけど、宵祭も幻想的でよかったですね。2日かけて見ると異なる魅力がありますよね。ありがとうございました!

【後記】
伝統の祭事を中心になって動かしている青山さん。伝統芸能を継承する難しさ、次の担い手についてもしっかりとお考えになっています。「これからは外で舞う機会を」とおっしゃっていました。もしかすると、近い将来にこの貴重な獅子舞が瑠璃寺の外で見られる機会があるかもしれません。でも、やはり瑠璃寺で見る獅子舞が一番ですので、皆さんもこの貴重な祭事を見に高森までお越しください!

(了)

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写真:Noémie
文:Hattori
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※本記事は2024年6月●日時点の内容を掲載しております