たんぽぽ食堂 店主 牧内和江

たんぽぽ食堂 店主 牧内和江

牧内和江

KAZUE MAKIUCHI たんぽぽ食堂 店主
TAKAMORIJIN File No.012

牧内和江

KAZUE MAKIUCHI

たんぽぽ食堂 店主

から揚げ&たんぽぽカレー

人前に立つと緊張すること。

常に勉強だと思っている。来てくれたお客さんに 喜んで帰ってもらえるよう様々な工夫を したり、ちょっとした些細なことでも改善しようとしている人。人と関わることが大好きで、明るくて、元気な姿が印象的な人。いろんな人の希望がカタチになる食堂の店主。実家の家業は鮎の養殖で、鮎に関しても熱く語ることができる。

月夜平展望台

たんぽぽ食堂 店主 牧内和江

このお店はいつからやられているのですか?

2018年の3月からなので、もう5年目になりますね。

お店をはじめたきっかけを教えてください。

叔母の紹介でというかたちではじめることになりました。
もともと料理を作るのが好きで、2人の弟がいるんですけど、みな料理関係の仕事をしていて 。
実家は、鮎の養殖をやっているんですよね。その養殖場の隣で一番下の弟が割烹料理屋を営んでいて、私がそこで料理を手伝っていたこともあって。
これまで自分でお店を出したことはなかったけれど、ちょうどこの店舗が空いていて 、そういった紹介などの機運もあって、はじめることになりました。

そうなんですね。ちなみに、鮎の養殖はどちらでやられているのですか?

座光寺でやっていますよ。ブランドになっていて全国各地に出荷しています。とっても綺麗な地下水を使っているので、銀座の星付きのお店さんとも取引があったりするんです。

なるほど。叔母の紹介がなければ、はじめていなかった可能性もあるということでしょうか?

そうですね、ずっと家業の割烹料理屋で働いていた可能性はありますね。

お昼だけの営業をされているのでしょうか?

夜も全然、やっていますよ。まぁ予約のお客様だけですが。ここらあたりって、飲む居酒屋さんが少ないので、ご近所の方だったり、さまざまな組合関係の方々に使っていただいていますよ。県外の方でも、電話していただければ全然開けられますし、通常、来るのであれば11:30~14:00まで。ラストオーダーは、13:30まで、そんな形でやっています。

そうなんですね、ご実家が鮎屋さんということですが、ずっとこの辺りに住まれているのでしょうか?生い立ちも教えていただけたら嬉しいです。

もともとは父親が金魚屋だった。詳しくはわからないが、30年前ぐらいかな。金魚が下火になってきたので、アユに切り替えて。だけど、アユも手探り状態。弟が全部経営しています。信州サーモンとアユといろいろやってみてアユがいいものができたので、アユの養殖をはじめて。私も小さい頃から、手伝ってきました。そのあとは、札幌にいました。それで、約8年ぐらい前にこっちに帰ってきました。一回外に出ると地元が「いいね」、故郷が「いいね」と改めてわかったことがたくさんあった。中にいると、当たり前に思えてしまうことでも外に出ると魅力的に感じたんですよね。やっぱり、高森町の山並みを見ると帰ってきたと思えるんです。

ほかに気づきとしてありますか。ここが良かったというところとか?お店もすごく、アットホームでいい雰囲気ですよね。

地元愛というか、家族もそうだし、すごく温かみがあるのが、改めてわかりました。人と人の繋がりを大切にしたいと思えるところですね。なので「たんぽぽ食堂」としても、来たお客様を、わたしも暖かくお迎えしたい。

ほっこり帰ってもらいたいんですよね。お腹を満たすのは当然で、プラスアルファとして、アットホームな雰囲気づくりだったりを心掛けています。

「また来たい」と言っても らいたい 、 お客様に ニコニコして帰ってもらいたいっていうのもすごく大事にしているので、そう言ってもらえるのは嬉しいですね。
店内の内装も、実は友達が全部手掛けてくれたんです。かずえさんが、店をやるならと言って。全部手作りなんですけど、その上に貼っているものもクリスタルボウルの演奏をやりながら降りてきたものを「書いて」と依頼した。気が回るように全部ここへ来るとほっこりするねとか、アットホームだねといわれることが多いですね。
女性が1人でも、入りやすいと言っていただけて、お年寄りの方の利用も多いです。
最近でも、ある年配の方が「今まで旦那と二人で食べ歩きをしていたけれど、旦那が亡くなって一人きりになって。食べに出たいが一人で入れる店がない。ここはいいよね。女性が一人で入れる。この辺りはイタリアンとか洋食の店が多く、和食のお店が少ない。家で1人分の煮物を作ろうと思っても、なかなか作れない。ここの煮物は旬の野菜をいっぱい使っていて、バランスがいいね!」と言ってくれて、嬉しかった。

それは嬉しいですね。

私も嬉しいし、お客さんも嬉しい。その姿を見られるのがもっと嬉しいんです。人がとにかく好きなので、本当は料理を作りながら、話ができたらなあって思っています。どうしても忙しいと作るだけになってしまうのがちょっと悲しいこともありますが(笑)

まぁ飲食店で忙しいのはいいことですからね。(笑)ちなみにメニューの中で一番人気なメニューって何なんですか。

唐揚げが一押しかな~。

こだわりがあるんですか。企業秘密の部分。ニンニクとか。

醤油だけしか使ってないです。他は何も入れてないんですよ。ボリューム感といいねと言われますね。年配のかたなんてそんなに食べられないよっていうけれど、案外食べられちゃうと評判をいただいています。

え!そうなんですか、ジューシーでした。味もちょうどいい塩梅で濃かったです。たんぽぽカレーっていうのもあるんですよね?

旬のリンゴをベースに、作っています。このあたりは、リンゴの栽培が盛んなんですよね。なので、お水を使わないでつくっていますよ。

メニューにある「鯉のうま煮定食」これは、旅行者におすすめなメニューになるんですか?

これは、旅行されている方にも人気ですが、地元の方も食べますよ。この辺ではコイのうま煮定食を出すお店がないんですよね。臭みもなくて、この辺だとお祝いの際に召し上がる感じです。海がないから、川魚を食べていました。

どれも美味しそうですね・・・これらのメニューも手書きで作られているんですか?

高森のもたいえみさんっていう方で、書道家の姉さんが全部やってくれた。こっちの黒板の方、また違う方が書いてくれたんです。

「てしごとや」の吉沢さやかさん。これらのチョークアートは、彼女の手書きですよ。
絵も全部彼女の手書きで、本当にすごいんですよ。

そのうち、壁を覆いつくしそうな勢いの作品の数々ですね。(笑)楽しみながらやれているって感じがして、とてもいいお店ですね。ストーリーを聞くと尚更そんなことを感じました。これからやっていきたいことは、何かありますか?

年齢関係なく、男女も関係なく、職業も関係ないので。農家の方とかだったら、今の若い子たちに継いでいってもらいたいけど、昔のやり方ではダメなんですよね。

休みがないと。休みを取らせてあげられない。昔は忙しいかきいれ時に休みなしが普通だったけど。今の子にそれをやれと言っても無理って、そんな話がこの食堂で話されるときもあります。
いろんなことを、私も高森町や地元が盛り上がるように仕掛けていきたいと強く思っています。
高森を盛り上げていこうというのは、きっとみんな一緒なので。そこをどうやって1つ1つ絡めていくのかっていうところであって。いつかイベントをやろうと思っていて。

多くの人に生産者に会ってもらえるような、そんなイベント。例えば、シードルとかリンゴなど、何でもいいけど、結局生産者の顔を見えていない。ただ買うだけだし。私お酒を飲むのが好きなので、利き酒をやりたい。いろんなブースで利き酒をやりたいなって。おちょこじゃないけどグラスを持って、気に入ったのをもらいながら、気に入ったお酒を生産者と話をしながら、そこから買うみたいなことをやりたいという夢はありますね。

そのにじみ出てくる愛情というか、人を大切にしたいという想いは、どこから沸いて出てくるのでしょうか?やはり幼少期の思い出とかが強く影響しているのでしょうか?

昔は家業が、金魚屋だったので、的屋からいろいろな人達が出入りしていたお客さんとして。

そうすると人間観察ができる。それが面白いんですよ。本当にいろんな人が家に出入りしていたから。

だから、人とのお付き合い、人とのかかわり方とか小さいときからたぶん意識はしていないけど見ていたんです。実家で手伝いをしていたときに、例えば納涼祭とか子供の日とかに金魚すくいのお手伝いをしていたりしました。露店でやっていたこともあって。人と接することも多くて、それが今に生きているのかもしれませんね。なので、ちっちゃい頃から客商売は面白いと思ってやってきました。なので、今の仕事が天職なのかもしれません。
今は、とても楽しく仕事をさせてもらっています。

いいですね、そうやっていえる環境は素晴らしいです。今日は、ありがとうございました。またから揚げを食べに来ますね。

こちらこそ、ありがとうございました。また遊びに来てくださいね。
美味しいご飯をつくってお待ちしていますよ。

明るく笑顔で出迎えてくださった和江さん、から揚げがとにかく絶品で、醤油だけでこの味が出せるのかというほど。老若男女問わず、高森町の居所になっているアットホームな雰囲気は、和江さんの雰囲気そのものです。高森町にお越しの際は、是非「たんぽぽ食堂」でお食事してみてください。運がよければ、和江さんのご実家で養殖した稚鮎や鮎も食べれることがあるかもしれません。
--
写真・文:Yusai Oku
--
※本記事は2022年4月15日時点の内容を掲載しております